イノベーションの手法:変化へのリスク,変化しないリスク

当事務所は大阪府枚方市にありますが、いま大阪といえば、橋下徹氏が代表を務める大阪維新の会が、大阪のみならず全国的にも話題になっています。
   日本弁理士会近畿支部は、橋下氏が大阪府知事の時代に、それまで大阪府から間借りしていた関西情報センターから追い出されました。 このため橋下氏や大阪維新の会をあまり快く思っていない近畿の弁理士も多いようです。
   ただ、このタイミングで、大阪維新の会のように大阪の統治機構を再編させようとするグループが表れてきたのはある意味必然だったような気がします。

2012年現在、東京は再びオリンピックの候補地に名乗りを上げようとしています。ところで2000年頃に2008年オリンピックを大阪に招致しようという活動があったことを覚えていらっしゃるでしょうか?
   当時は大阪府は財政的に苦しいが、大阪市は潤っているといわれていました。 しかしその後、大阪を本社にしていた企業が東京に本社を移す、東京・大阪の本社2部体制を東京に一本化するなどの動きがあり、大阪市の台所事情もここ10年来下り坂だったようです。
   そうであれば、行政機関も財政事情に見合った組織に変えていかないとならないはずです。 ところが変化を最も苦手とする組織体が官僚機構という組織体です。 官僚機構は変える必要のない状況においては先例などに沿って仕事をこなすので、最も効率的に業務が運ぶ組織体ですが、変革のときには適していない組織体といえます。
   この10年、官僚組織のもと、10年前とさほど変わらないやり方で、収入だけが下降線を辿ると、真綿で首を絞められた状態で、じわりじわりと苦しくなります。 その真綿首絞め状態に気付いてこれを断ち切る最後のチャンスで橋下徹氏や大阪維新の会が必然的に出現してきたように思います。

その橋下氏,大阪維新の会であっても、既存組織,団体からは大きなバッシングを受けています。 危機意識を持っていたとしても、既存のやり方を変更するのはそれほど難しいのだと改めて思い知らされます。

振り返って中小企業の皆さまはいかがでしょうか? 現在の日本の中小企業は二分化し始めているといわれています。一方は従来の大企業の下請け受注を続けている企業、もう一方は大企業の下請けから脱却し、自社の強みを生かしたオリジナルな製品の開発にシフトを切っている企業です。
   ただ大企業下請からの脱却を模索している企業では、新たに開発したオリジナル製品が必ずしも売れないで苦しんでいるところもあるようです。 それを前者の企業から見ると、やはりオリジナル製品の開発には開発リスクがつきものだと考え、自社の慣れ親しんだ商売のやり方を変えない理由になっています。

しかし、下請体制を脱却できない中小企業の場合には、開発リスクのかわりに、徐々に受注が先細りするという真綿首絞めリスクがあるのです。 真綿首絞めのリスクはじわりじわりと経営を圧迫し、気付いた時には取り返しのつかない事態になってしまいます。

人材が多い大阪府,大阪市では、最後のチャンスで橋下氏,大阪維新の会が登場しました。 社員数の少ない中小企業の中から橋下氏のような改革者が現れるでしょうか? もしそれが難しいようだったら、取り返しがつかなくなる前に、真綿首絞めのリスクを十分認識し、どうせ取るなら失敗が先につながる積極的なリスクに変えてみてはいかがでしょうか?

それが経営の神様ドラッガーのいう「イノベーション」につながります。

(2012年2月〜9月掲載)