利益の取れる業態の変化:大企業から中小企業へ
昨今、国内大手家電メーカの苦戦が伝えられています。
シャープは1万人規模の人員削減と台湾の鴻海精密工業から出資の要請を行いました。
パナソニックにも貝塚工場閉鎖し、中国・蘇州に全面移転するという話題がありました。もっとも現在のような政治の状況下では、中国に全面移転することは、かなり大きなカントリーリスクを抱え込むように思われますが。
このような現象は、日本企業の技術力・製品力が衰えてきたから起こっているのでしょうか?
確かに韓国のサムソン,中国のハイアールなど、日本以外のアジアの大手家電メーカーが力をつけてきています。
日本の電機メーカーは、これらアジア勢を前に価格競争で厳しい戦いを強いられていると言われています。品質の優れる日本製は、どうしても高くついてしまうということでしょう。
しかし本当に製品の品質が優れるのであれば、その品質に見合う価格のままで、低価格商品と同等の勝負できなければなりません。
問題は、大企業が扱う製品群では、ある水準の性能を満たしさえすれば、消費者はその製品群にそれ以上の価値を見出せなくなっていることにあるように思えます。
つまり家電のようにライバル企業も多く、差異化のポイントが難しい先端技術にある場合には、消費者はそこに存在する価値に対価を払おうとしないと考えられます。
例を挙げれば、冷蔵庫を買う場合に、容量400Lよりも550Lのほうがたくさんの食品を冷やすことができるという機能は、対価を払うべき違いがはっきりしているでしょう。
しかし、冷蔵庫の除菌機能で、シャープのプラズマクラスター機能とパナソニックのナノイー機能がどこが違っていて、自分としてはどちらが良いと思うかを判断できる人はほとんどいないのではないでしょうか。
結局、消費者は「除菌できるならどっちでもいいんじゃない?」程度の価値しか見出せなくなっています。
むしろ、ライバル企業が少ない分野におけるオリジナリティの高い製品に、消費者は価値を認める傾向にあるといえます。
なぜならそのような分野では、同種製品間の価格の比較自体もあまり激しくなく、かつ商品特徴の差異が消費者に分かりやすいからです。
そしてライバル企業が少ない分野の代表格は、いわゆるニッチ分野です。
このことは、利益を取れる業態としては、大企業が絶対的有利な立場であったのが、むしろ中小企業の業態のほうが有利な状況に変わってきつつあることを意味します。
なぜなら大量生産・大量販売が武器の大企業の業態では、一定以上の売上が見込めないニッチな分野には参入しにくいからです。
ただしこれは、中小企業から利益の取れる商品が生まれる地合いが出てきただけのことなので、もちろん中小企業ならどこでも有利になるということではありません。例えば、より早く,より精度よく,同じ製品を大量に製造できることがウリの中小企業は、ニッチ分野での活躍が見込めません。
求められるのは、オリジナリティのある技術、商品開発の企画力、そして小回りのきく力です。
そのようなオリジナリティあふれる商品を生み出せる力は、その中小企業の知的「財産」です。
そしてそんな知的財産は、きちんと権利化して、自社の製品をニセモノ,パクリ品からしっかり守る必要があります。
(2012年10月〜12月掲載)